2025/09/07

「売上低迷」の原因は、実はそこじゃない。世界のサステナブルマーケティング事例から学ぶ、組織を動かす『存在意義』の見つけ方

パタゴニアやナイキが実践する、未来型の経営戦略。サステナビリティを単なる流行で終わらせない、組織を強くするブランド哲学とは?中小企業のための実践ガイド。

上村啓太

2025/09/07

「売上低迷」の原因は、実はそこじゃない。世界のサステナブルマーケティング事例から学ぶ、組織を動かす『存在意義』の見つけ方

パタゴニアやナイキが実践する、未来型の経営戦略。サステナビリティを単なる流行で終わらせない、組織を強くするブランド哲学とは?中小企業のための実践ガイド。

上村啓太

私たちは、貴社のブランドが輝き、測定可能な事業成果をもたらす、高性能のマーケティング機能と自律成長組織の構築を専門としています。

世界の潮流から見る、サステナブルマーケティングの『今』

「サステナブル」と聞くと、まだ自分には関係ない、大企業の話だと思っていませんか?しかし、すでに世界のビジネスは、この大きな潮流へと舵を切っています。

PwCの調査によると、環境や社会への課題に対する消費者の理解と、それに取り組む企業への共感は、わずか1年で1.5倍に拡大しています。特に、若い世代(10代)と、次の世代を案じるベテラン世代(60代以上)で、環境に配慮した商品への購買意欲が高まっているというデータもあります。

また、国内の市場を見ても、サステナビリティに関連する市場は驚異的なスピードで成長しています。ある調査では、国内のサステナビリティ/ESG(環境、社会、ガバナンス)サービス市場は、2025年に2,735億円に達し、2029年には4,962億円規模にまで成長すると予測されています。これは、年平均成長率16.0%という、非常に高い伸び率です。

これらのデータが示すのは、サステナブルな取り組みが、もはや「義務」や「コスト」ではなく、「事業成長のための投資」であり、消費者との新たな関係を築くための「共通言語」になりつつあるということです。あなたの会社がこの潮流に乗るかどうかで、5年後、10年後の未来は大きく変わるでしょう。


VELET「札幌の未来を担う中小企業に、CMO代行と組織育成を」

北海道札幌市のマーケティング&コーチングカンパニー URL:https://velet.jp/

個別セッションMTG用URL https://timerex.net/s/uemurankeitan_baea/7942e040


組織を強くするブランド哲学:ミッションを事業の核に据える

サステナブルマーケティングで成功を収めているブランドは、単なる製品の機能や価格を訴求するのではなく、自社が「何のために存在しているのか」という問いに真摯に向き合っています。彼らの行動は、企業のミッションや哲学と深く結びついており、これが顧客だけでなく、組織で働くメンバーの共感をも引き出しているのです。

パタゴニア:ブランドミッションと行動の融合

アウトドアブランドのパタゴニアは、サステナブルマーケティングの先駆者として、環境保護をブランドのDNAに深く刻み込んでいます。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というブランドミッションは、単なるスローガンではなく、すべての事業活動の出発点となっています。

彼らの「Protect Our Ocean」キャンペーンでは、海底トロール漁の問題を訴え、消費者に行動を呼びかけました。これは、顧客を単なる購入者ではなく、共通のミッションを持つ「仲間」として巻き込むことに成功しています。この取り組みは、製品を売る行為そのものが、社会貢献へと繋がるという強いメッセージを生み出し、消費者に深い共感を呼び起こします。組織の視点から見ると、このような明確なパーパスは、従業員一人ひとりの働く意義を明確にし、強い結束力を生み出す原動力になります。

ベン&ジェリーズ:アイスクリームを社会変革のツールに

アイスクリームブランドのベン&ジェリーズは、自らを「アイスクリームを作る社会正義企業」と位置付けています。彼らが掲げる「Linked Prosperity(連鎖的な繁栄)」という考え方は、事業の成功が、関わるすべての人々(顧客、従業員、地域社会)の豊かさにつながるというものです。

フェアトレード認証を受けた原材料の使用や、サプライヤーの多様性を重視する姿勢は、単に製品の品質を高めるだけでなく、彼らの価値観をサプライチェーン全体で実践していることを示しています。これにより、彼らは単なる製品提供者にとどまらず、社会問題に積極的に取り組む「活動家としてのブランド」という地位を確立しました。このアプローチは、顧客に「このブランドを応援したい」という強いロイヤルティを生み出し、競争優位性を築いています。

循環型ビジネスモデルと顧客の行動変容

サステナブルな取り組みは、時に既存のビジネスモデルを大きく変革することを要求します。しかし、この変革こそが新たな価値を生み、顧客の行動をより良い方向へ導くきっかけにもなるのです。

IKEA:循環型経済への挑戦

家具ブランドのIKEAは、循環型経済への移行を事業の中核に据え、製品の再利用、修理、再販、リサイクルを前提とした「サーキュラーデザイン原則」に基づいた製品設計を進めています。

特に象徴的なのが、「CIRKULÄR」キャンペーンです。ブラックフライデーの過剰消費に対抗するため、不要になったIKEAの家具を顧客から買い取り、修復して再販する仕組みを構築しました。この取り組みは、消費者の「物を大切に使う」という行動変容を促すことに成功しました。この事例から学べるのは、サステナビリティを消費者に「無理なく、楽しく」実践してもらうための仕組みづくりが重要であるという点です。事業と顧客体験を一体化させることで、環境負荷低減とビジネス成長を両立させています。

ナイキ:循環型スポーツの未来を創造

スポーツウェアブランドのナイキは、「Move to Zero」というビジョンを掲げ、「ゼロ・カーボン」と「ゼロ・ウェイスト」を目標に、再生可能エネルギーへの移行やサステナブルな素材の使用に焦点を当てています。

彼らは、海洋保護団体「Parley for the Oceans」と提携し、回収した海洋プラスチックをスポーツウェアに再生するという具体的な行動を通じて、社会課題との向き合い方を提示しました。さらに、フィットネスアプリ「Run for the Oceans」を通じて、走った距離がプラスチック汚染対策の資金に繋がるという仕組みを構築。これは、顧客を「運動する」という日常的な行動を通じて社会貢献に参加させ、ブランドへの愛着を深める優れた戦略と言えます。自社のコア事業と社会貢献をシームレスに結びつけることで、多くの人々を巻き込むことに成功しています。

共感を呼ぶコミュニケーション戦略:ユーモアと教育の融合

サステナブルなメッセージは、時に重くなりがちです。しかし、ヘルマンズや日産、ダヴのように、ユーモアや感情、教育という要素を巧みに組み合わせることで、顧客の心に響くコミュニケーションを生み出すことができます。

ヘルマンズ:ユーモアでフードロスを身近に

マヨネーズブランドのヘルマンズは、フードロス対策という社会課題を、ユーモアを交えて伝えることに成功しました。「冷蔵庫の残り物」キャンペーンでは、有名人を起用し、冷蔵庫に残っている食材をマヨネーズを使って魅力的な食事に変える方法を紹介。

これにより、フードロス削減という問題を、難しい話ではなく「楽しくて、すぐに実践できる」アイデアとして提示しました。この事例は、社会課題を解決するブランドの姿勢を示す一方で、製品の利用シーンを具体的に提案することで、顧客とのエンゲージメントを深めています。

日産:「電気」の感情的価値を伝える

日産は、電気自動車(EV)のマーケティングにおいて、単なる環境性能だけでなく、EVに乗ることの感情的な価値を伝える戦略をとっています。「Feel Electric」キャンペーンでは、ドライバーの感情(心拍数や脳波)をEVのボディに映し出される光のショーに変えるという画期的な試みを実施。

これにより、EVがもたらす「興奮」や「喜び」といった感情を視覚化し、消費者の心を動かすことに成功しました。これは、機能的な価値(環境性能)だけでなく、情緒的な価値(運転の楽しさ)を訴求することで、サステナブルな選択をより魅力的に見せるマーケティングの成功例と言えるでしょう。

ダヴ:AIと現実の美をめぐる活動

ダヴは、美容業界におけるサステナビリティを、環境問題だけでなく社会的な側面にも拡大させています。2004年に始まった「Real Beauty」キャンペーンを、AI技術の発展という新たな脅威に対応させる形で進化させました。2024年には、AIを用いて女性の画像を生成したり歪めたりしないことを約束する「#KeepBeautyReal」という誓約を掲げ、AI時代における「現実の美」の重要性を訴えています。

この取り組みは、技術革新がもたらす社会課題にいち早く向き合い、ブランドの倫理観を明確に示した点で注目に値します。また、「Code my Crown」のような社会的な包摂性を高める取り組みも同時に行うことで、多様な視点からブランドの存在意義を強化しています。

日本企業の挑戦:ファストファッションの再定義

海外だけでなく、日本企業もサステナビリティを事業の核に据え、革新的な取り組みを進めています。ユニクロの事例は、既存のビジネスモデルを変革する勇気と、顧客を巻き込む仕組みの重要性を示しています。

ユニクロ:循環型ファッションの実現へ

ファストファッションの代表格であるユニクロは、サステナビリティを事業の核に据え、ビジネスモデルを革新しています。「RE.UNIQLO」は、顧客から不要になった衣類を店舗で回収し、ダウンジャケットの素材などに再利用する取り組みです。これにより、衣類の廃棄を減らし、循環型ファッションの実現に貢献しています。

また、ヒートテックやエアリズムといった機能性素材の開発に投資することで、消費者が少ない枚数の高品質な衣類で快適に過ごせるようにし、結果的に過剰消費を防いでいます。これは、流行を追うのではなく、本当に価値のある製品を提供することで、サステナビリティと事業成長を両立させるという、戦略的なアプローチと言えるでしょう。

まとめ:あなたの事業を『未来型』にするために

ここまで見てきたように、サステナブルマーケティングは、単なる環境活動やイメージ戦略ではありません。それは、企業のパーパス(存在意義)と事業活動を一体化させ、顧客や従業員との間に深い信頼関係を築くための、本質的な経営戦略です。

売上が伸び悩む、組織に活気がないといった課題は、多くの場合、この「軸」がぶれていることに起因します。成功事例に共通するのは、「何を売るか」だけでなく、「なぜ、私たちはこれをやるのか」という問いに真剣に向き合い、それを事業全体で体現していることです。

私たちCMO代行は、この「軸」を経営者の方と一緒に見つけ、言語化するところから始めます。そして、そのパーパスをマーケティング戦略に落とし込み、現場のメンバーが自律的に動ける「組織」へと変革していく伴走をさせていただきます。一過性の成果ではなく、持続的に成長し続ける強い事業と組織を、あなたの会社にも実装していきましょう。

ビジネス・マーケティング用語のTips

  • サステナブルマーケティング: 環境や社会、経済の持続可能性を考慮したマーケティング活動のこと。単に環境に優しい製品を売るだけでなく、企業活動全体を通じて社会的な価値を創造し、顧客との長期的な関係を築くことを目指します。

  • ブランドミッション: ブランドが「何のために存在するのか」「何を目指すのか」を明確に言語化したもの。製品やサービスを超えた、企業の根本的な価値観や目的を指します。

  • 循環型経済(サーキュラーエコノミー): 製品を一度使って捨てるのではなく、再利用、修理、再資源化などを通じて、資源を循環させて経済活動を回していく仕組みのこと。

  • パーパス: 企業やブランドの「存在意義」「なぜ、私たちはこれをやるのか」という根本的な問いへの答え。企業の活動や意思決定の指針となります。

  • ROI(Return on Investment): 投資対効果のこと。広告費など、投じた費用に対してどれだけの利益が得られたかを測る指標です。

  • PDCA: Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことで、業務を継続的に改善していくマネジメント手法。

  • LLMO(Large Language Model Optimization): 大規模言語モデル(LLM)の能力を最大限に引き出し、SEOやコンテンツ生成、顧客対応などのマーケティング活動を最適化すること。

VELET「札幌の未来を担う中小企業に、CMO代行と組織育成を」北海道札幌市のマーケティング&コーチングカンパニー URL:https://velet.jp/

個別セッションMTG用URL https://timerex.net/s/uemurankeitan_baea/7942e040

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