2026/01/11

「いい人が採れない」は、本当か。──採用基準を変えたら、人材難が解決した話

給与競争では人材難は解決しない。ある会社が「技術」ではなく「人柄」で採用し、育成を仕組み化したことで採用の悪循環を断ち切った事例を紹介。採用戦略を見直すヒントに。

上村啓太

2026/01/11

「いい人が採れない」は、本当か。──採用基準を変えたら、人材難が解決した話

給与競争では人材難は解決しない。ある会社が「技術」ではなく「人柄」で採用し、育成を仕組み化したことで採用の悪循環を断ち切った事例を紹介。採用戦略を見直すヒントに。

上村啓太

私たちは、貴社のブランドが輝き、測定可能な事業成果をもたらす、高性能のマーケティング機能と自律成長組織の構築を専門としています。

「求人を出しても応募が来ない」「やっと採用できても、すぐ辞めてしまう」──そんな声を、あらゆる業界で耳にするようになりました。

人手不足の時代、多くの経営者が「条件競争」に巻き込まれています。給与を上げ、休みを増やし、福利厚生を充実させる。それでも、思うような人材は集まらない。

けれど、ある地方のサービス会社が、まったく別のアプローチで、この問題を乗り越えました。その方法は、驚くほどシンプルなものでした。

1. 「条件競争」という終わりなきレース

人が足りない。だから給与を上げる。近隣の競合も上げる。こちらも負けじと上げる──。採用単価は年々高騰し、利益を圧迫していきます。

仮に採用できたとしても、次の壁が待っています。「育成」です。

現場のベテランに任せきりのOJTは、教える側の負担が大きく、質もバラバラになりがちです。「教え方がわからない」「忙しくて面倒を見られない」という声が上がり、新人は孤立し、結局辞めていく。

採用しては辞められ、また採用する。この悪循環に、経営者の時間と意思決定エネルギーが吸い取られていきます。

2. 「採用ルール」を変えるという発想

この会社が最初に変えたのは、「どんな人を採るか」という基準そのものでした。

従来、この業界では「専門知識があるか」「資格を持っているか」といった「技術」が採用の物差しでした。しかし彼らは、こう考えを改めたのです。

「技術は、後からインストールできる。でも、人柄や姿勢というOSは、簡単には書き換えられない」

技術ではなく、「OS」で採る。つまり、専門性よりも、「人が好きかどうか」「誰かの役に立つことに喜びを感じるかどうか」を重視するようになったのです。

3. 「その『お節介』は、才能だ。」

彼らが目を向けたのは、異業種で働く人たちでした。

飲食店のフロアリーダー、介護施設のスタッフ、アパレルの販売員──。お客さまに「ありがとう」と言われることがうれしい。困っている人を放っておけない。そんな「お節介」な人たちです。

「その『お節介』は、才能だ。」

これが、新しい採用のメッセージになりました。

専門知識はゼロでもいい。資格がなくてもいい。大切なのは、人の成長を喜べる心と、一歩踏み込む勇気。その素質さえあれば、あとは会社が責任を持って育てる──そう宣言したのです。

4. 「アカデミー」という育成装置

採用基準を変えるだけでは、絵に描いた餅です。彼らは同時に、「育成の仕組み」を整えました。

2ヶ月間の集中研修プログラム。いわば「ブートキャンプ」です。異業種から来た未経験者が、ここで必要な知識と技術を体系的に学びます。資格取得のサポートも会社が全額負担。現場に出る前に、一定の基準をクリアした状態で送り出す仕組みを作ったのです。

これにより、現場のベテランへの負担は大幅に軽減されました。「教えるのが苦手」という人も、基礎ができた状態の新人を受け入れるなら話は別です。OJTの属人化という問題も、根本から解消されていきました。

5. 何が変わったか

この取り組みによって、いくつかの変化が生まれました。

採用の母集団が広がった。 同業他社と同じパイを奪い合う必要がなくなりました。「お節介が才能」というメッセージは、今まで振り向いてもらえなかった層に届いたのです。

サービスの質が安定した。 「教え方」が標準化されたことで、誰が入社しても一定レベルに到達できるようになりました。ベテランの「勘と経験」頼みからの脱却です。

経営者の時間が戻ってきた。 採用と育成の意思決定を仕組みに委ねることで、経営者は本来注力すべきことに向き合えるようになりました。

おわりに──「採用」は、究極のマーケティングである

人材難の時代に必要なのは、完璧な人を探し続けることではありません。

「どんな素質を持った人なら、自社で活躍できるか」を見極め、その人を確実に育て上げる仕組みを作ること。採用の入り口と、育成の出口をセットでデザインすること。

技術は後から教えられる。けれど、「人を思う心」は、教えて身につくものではない。

だからこそ、採用の物差しを変える。「技術」から「OS」へ。その発想の転換が、人材難という難題を解くカギになるのかもしれません。

私たちは、「採用は究極のマーケティングである」と考えています。商品やサービスを届けたい相手に届けるのがマーケティングなら、「一緒に働きたい人」に自社の魅力を届けるのが採用。そこには、戦略と設計が必要です。

もし、御社の採用に「戦略」という視点が欠けているなら、一度立ち止まって考えてみてください。条件で勝負するのではなく、「誰に、何を、どう届けるか」を。

採用を「戦略」から見直したい方へ|VELET 採用支援サービス

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